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(原文) 講師検束され講演会お流れ、村山氏等のプロ作家連
【群馬電話】六日午後七時伊勢崎町共栄館に開催の同町『無青』有志の文芸講演会に出席のため同六時ごろ同町に着いた村山知義、小林多喜二、中野重治外数名のプロ作家は『無青』伊勢崎支部の斎藤勤、菊池利蔵等と共に講演会場に赴く途中突如高崎署に検束された 
急を聞いて同署に駆けつけた同支部の菊池盛男外数名も忽ち検束されたので同講演会は弁士を失ひ開催不能に陥った一方県特高課では係官を出張せしめて検束者を厳重取調べて居る
(解説) 七日朝刊に載った記事ですから、七日午前二時に交渉が成立した事件の全体は伝えることはできません。まだ、奪還事件の発端部ですが、誤りそのものが事件を現場から電話で伝えた臨場感を持たせています。検束署は「高崎署」でなく、当然伊勢崎署です。また「齋藤勤」は齋藤力、「菊池利蔵」は菊池敏清です。講演会は「開会不能」でなく、決行しています。ただし、開会時間を「午後七時」としているのは、記者が共栄館にいて、開館時間を遅らせたのを知っていたと推測させます。とすれば、電話をしたのは、六時台ということになるでしょう。